鮑(あわび)と伊勢海老

いずれも地元で採れる海のもの。たまたま図書館で見つけた「鮑」と「伊勢海老」に関する本を読んだので知り得た情報を一部開示する。

鮑は「日本書紀」にも出てくるくらい古くから食され、又神様への献上物ともされてきた。

伊勢神宮への奉納品としては志摩市国崎(くざき)の熨斗(のし)鮑がある。「のし」は

ご祝儀袋の飾りとして残っているが元々は熨斗鮑が使われていたとのこと。

熨斗鮑は、あわびの身をリンゴの皮を剝くような塩梅で薄く切り出した後、乾燥させたもの。

であるからある程度厚みのある(大型の)鮑でないと加工に向かない。

これは保存食としても珍味らしい。私は食べたことがない。蒸し、焼き、刺し身として食するのが

一般的。(もう何十年も食べてないなぁ。)

昔はたくさん大型のものが採れたらしい。地元の家庭の神棚には鮑の貝殻をお供え用の器と

して使用しているのを見かける。このようなものが昔良く採れたという証でもある。

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全長約15センチメートル

志摩の海女さんたちは資源保護の為、確か11センチ以下は採取しないことになっている。

写真を撮る時の光の具合で

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反射する色も変わる。昔話では貝殻がこのように妖しく光ることで宝物として登場したりする。

また沈水漏れで没寸前の船を鮑が身を持って助けた故事に由来して鮑をご神体として崇める

神社も茨城県にあるようだ。 発色が綺麗だから螺鈿細工にも使われる。

鮑の成長は稚貝の形になってから半年で約1センチメートルになる。上記写真は五年もの。

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このコレクションは私が数十年前に採取したもの。似て非なるトコブシの稚貝も混ざっている。

中心にある一番小さいもので約5ミリメートルだからこれ以外のものは一年以上経たものである。 鮑の稚貝は写真右側の青っぽくて丸みがあり表面が波打っているもの。

このように小さい貝殻はその昔には結構渚で拾えたものだが今は皆無といっていいくらい見つからない。 このように虹色した貝殻に魅せられて収集したが今は貴重品。 尾鷲市の喫茶店の店主が貝殻コレクターで店内には多種多様のコレクションが見れると聴いたことがある。

鮑の産地は、エゾアワビがあるように結構広く分布しているが、磯場で且つ食餌となるワカメやアラメなどの海藻類が生えている場所でしか生息しない。例えば三重県でも伊勢湾内部では採れない。外洋に面している磯場が主たる生息場。日本海側の能登半島でも海女さんがおりアワビが採れる。でも最近では海藻類が少なくなってアワビの水揚げが減っていると何かの記事で読んだ。このような話は地元でも聞いている。

 

伊勢海老はこれに反し水揚げ量は増えてはいないが減ってもいない。かえって茨城や福島で

採れだしているようだ。 海老の成長には海水温が高いほうがいいらしい。伊勢海老の

食餌は小エビ、小さな貝などで海藻でないが、海藻類が餌の貝類がいなくなると伊勢海老も困るのだが・・・。 伊勢海老の生態系はまだ解明途上。

鰻とよく似ている点は外洋をさまよった挙句に磯に漂着すること。(鰻は川を遡上する。)

浜島町にある水産試験場で幼生から稚エビになるまで育成に成功したが鰻と同様、

幼生時期の餌が何がいいかわからず苦労したらしい。

アワビの養殖は昭和初期くらいから研究され今は盛んに養殖されている。養殖である程度

大きくなると放流されたりする。自然に放たれても小さい時に食べたものが影響するので

貝殻の渦巻きの始まりを見ればアワビが養殖ものどうかわかる。ホテルでアワビの食べ放題

とあるのは養殖物と見ていい。 伊勢海老の幼生からの養殖は鰻同様まだのようだ。

アワビ、伊勢海老の成長は日長に依存する。つまり太陽の日射時間。

甲殻類である伊勢海老は成長につれ脱皮する。この脱皮は日の出に集中するようだ。

伊勢海老の分布は台湾北部、済州島、本州千葉県以南の太平洋側で佐賀県辺りまで。

もちろん磯場が生育場所。 

アワビが採れて伊勢海老が採れる場所はそれほど広い範囲ではない。

 

End.