新刊「島へ、浦へ、磯辺へ」川口祐二著 

著者は南伊勢町・田曽浦出身の方で今年米寿を迎えられました。老いてなお執筆活動をされてます。この本は9月に刊行。文筆業は生涯現役を続けられるので羨ましい限り。

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作品群はタイトルにもあるように日本国内の海岸地方を訪ね歩いた紀行文。

私はほとんど読んでます。沿岸漁業は資源不足、後継者不足など問題が多いですが魚は少なくなったとはいえ需要はあるので絶やすわけにはいきません。作品全体を通してほどんどの漁業関係者が口にするのは「昔はたくさん取れた、乱獲した時期もあったがそれにしても少ない」と。総じて高度経済成長時代が始まる1960年あたりまでがよき時代だったようです。 

上記の本では伊豆諸島に元海女さんを訪ねますがなんと志摩半島出身の方々。今はウエットスーツで誰でも潜れますがその昔は専門職でないと深い海には潜れなかったので出稼ぎに来ていたようです。 済州島の海女さんたちが以前に日本にも来ていたように海はそれほど豊かだったのです。 伊勢湾についていえば、桑名のハマグリは1980年くらいには北朝鮮から輸入していたほど少なくなっており、最近ではコウナゴ漁ができなくなりました。湾内の漁師たちは河川の上流にダムや堰ができて流れ出る栄養素がなくなったのではとの見方をしてます。そういえば瀬戸内にコウナゴが最近少なくなってきたのは下水道の整備が進んで生活排水が流れでなくなったとの説もあります。

作品群を通して垣間見えるのは作者の豊富な読書量と文学作品に対する造詣が深いこと。そのとき感じたことを短歌や俳句、歳時記などから引用して紀行文に厚みを持たしています。ご本人は商学部出身ですが本音は文学の道へ行きたかったとのことです。

ますますのご活躍を。